『逆風を持って「徳」とする』を読んで

『逆風を持って「徳」とする』を読んで
中同協相談役幹事鋤柄 修

コロナ危機で中小企業の多くは経営環境の激変に苦慮しています。
経営者として自社の舵取りをどのようにすればよいか悩んでいる方に救世主のような書籍が発刊されました。

宮崎同友会にある「あかいし文庫」友の会がまとめたもので、ミスター同友会と言われた赤石義博氏、
藤河次宏氏、加藤明彦氏、の危機突破の実践例が克明に書かれています。3氏のタイトルはそれぞれ、
「逆風をもって徳とする」「つぶれない会社づくり」「人は資産なり」。
いずれも過去に起きた大きな経済ショック「オイルショック」「バブルの崩壊」「リーマンショック」
に直面していずれも同友会の学びの中から経営危機を克服しています。そこに共通するのは同友会が大切にしている
「人を生かす経営」です。この考え方のベースにあるのが「労使見解」であることは間違いありません。

第1章は、赤石さんの講演は聞く人によると何を言っているか分からないとよく言われました。
しかし文章になると誠にわかり易く奥の深さが読み取れ、全社一丸体制の全天候型企業づくりの道のりが理解できます。

第2章、藤河さんの「つぶれない会社づくり」では、経営者として財務戦略の重要性を学ぶことができます。
売上減でも利益が出る企業体質をどのようにつくってきたかがわかります。コロナショックで売上減の続く今こそよいヒントがあるでしょう。

第3章、加藤さんの「人は資産なり」は2代目社長として苦悩する中、同友会の共同求人で新卒定期採用で、
会社が社員によって力強く変革していく事が鮮明に描かれています。社員はB/S(貸借対照表)には表れない自己資本の一部だと断言されます。
危機を乗り越え次なる飛躍をする原動力は社員の力であることが読み取れます。

最終章は加藤さんによるコロナショックの今こそ経営者は何をやるべきかがステップ1からステップ5までわかり易く丁寧に記載されています。
いますぐ経営方針の見直しに着手される場合は大いに参考になるでしょう。

筆者も1991年に大きな借金を抱えて社長を引き受け、第二創業と21世紀型企業づくりにチャレンジしましたが、
新卒定期採用の社員が会社を変えていってくれました。

ピンチはチャンスだと言われますが、
今こそ経営環境の変化に対応して自社の経営戦略を見直す絶好の機会です。

3氏に共通する「人を生かす経営」が多くの同友会会員に共有され、
地域になくてはならない企業として発展されることを期待します。

『逆風を持って「徳」とする』

あかいし文庫友の会(宮崎同友会内)発行、A5判148ページ、1500円(税込)。

2020.09.05/1519号/6面 より引用